木曜日の午前中の幼稚園/円谷一
 
を園児に重ね合わせる 午前中が終わろうとしている 午後に入ってしまえばもう休日のことを考えている かけがえのないのない時間帯 僕は体の中にある鉛みたいなものをお腹に力を入れて持ち上げ 幸福の時間を終えようとする でもまだ正午には程遠い 僕は焦りやすいのだ
 一人の園児が転んで膝から血を流していた 僕は慌てて走り寄り 「大丈夫!?」と声をかけて応急処置をした お母さんは厳しい人なのできっと園長にクレームを言うだろう 僕がぼんやりしていたせいだ 心配よりも園児よりもこの世界に溶け込んでいた自分に対する少しの罪悪感の方が勝っていた 怪我をした園児を背負って 幼稚園に向かった
 幼稚園に帰る途中にあった時計を見ると12時5分前だった 世界が騒がしくなっていたような気がした 幼稚園に着くと園児の傷の手当てをして 手を洗ってうがいをしてみんなでお弁当を食べた 僕のは君が作ってくれたものだった 秋が終わろうとしていた
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