田舎の初恋/大小島
 
うに感じられる小学校の
あのこの顔を、重ねてみる。
このこの方が、十倍はかわいい。
しかし立ち上がる。潔く。
道路に出て、名残惜しげに
正面から女の子の顔を見つめてみる。
女の子はやっぱり道路から目を離さない。
ぼくは気づかない。バスがぼくを避けて、クラクションを小さく鳴らす。
あわててバスに乗り、すみませんなんてつぶやく。
女の子は乗ってこない。
ドアが閉まる。
もう一度だけ、ガラス越しに顔をみる。
顔をみて、椅子に座り、
窓を開けて、
木々の声をきく。
チェーホフはまだ書き出していない。
ぼくは本に彼女の顔を焼き付ける。
もう忘れかけている、そのきれいな横顔。
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