夏の骨/今唯ケンタロウ
だろう。
「はるか遠い地で、別れをおえてきた者……」
そう、声が、ひびいたとき、とつじょ、おおきなうねりが、ゆらめきが、ゆれが、その一帯に広がった。
なにひとつみえないくらやみのなかで、目鼻や耳、口や、手足、なかには頭ぜんぶを、うしなってここへきたものたちがいっせいに、さけび、なきだしたのだった。声にならぬ声で……いきものたちが、ひとしきりなきわめくのがおわったころ、再び……
「ねむりのとき……
やがてまたせいじゃくがきて、つめたさに包まれていくせかい、とじられることを受け入れた……
十
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