いつか詩になれるよう/松本 卓也
 
んに縋りついて
死んだらどうなるのって泣いてたな
今はもう三十も近くなったから
誰かに縋りついて泣く代わりに
布団を噛み締めて大声をあげたり
枕を抱きしめて壁を叩いたりして
紛らわせているだけだけど

いつか笑って逝ければいいな
唯一残された目標のようなもの
いつも微笑んでいればもしかして
いつの日か訪れる時だって
微笑んでいられるかもしれないな

端々で語られる物語のように
誰かの中で想い出になれるのかな
いつかどこか何らかの形で
僕は確かにそこに居たと
思い出してもらえるかな

もしそうなることが出来たなら
いつかあの小さな木の箱に入って
聞き入るだろう辛気臭い念仏だって
希望を奏でる送別歌に聞こえるのかな

教えて欲しいわけじゃない
ただそうとだけ信じていよう
顔も声も知らぬ誰かを通じ
僕が詩を詠えるように

顔も声も知らぬ誰かが
僕を詩にしてくれるよう

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