いつか詩になれるよう/松本 卓也
 
黒で彩られた人達の中で
どうにも落ち着かない感覚に襲われる
その家に訪れた不幸を
何とはなしに自分に置き換えてみる

命はやがて尽きる
そんなのは当たり前の事
なぜかしら目頭が熱くなり
微かな恐怖が胸を過ぎる

奇妙なほどリズミカルな法華経の念仏に
多分昨日まで生命だった肉塊が見送られる
泣いている人 俯いている人
訳も分らずきょとんとする子供
お義理で木魚に聞き入る僕

こんな風に泣くのだろうか
あんな風に悼むのだろうか
もしかしたらあの子供のように
何の実感も得られないまま
周りに流されるだけかもしれない

そういえばまだガキだった頃
お婆ちゃんに
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