父の日/北乃ゆき
 
いない様に見えた父の葬式には沢山の人が集まった。退職していたとはいえそれなりの地位と立場があった人だからそれはあたり前といえばあたり前だった。でも母と叔母と父の親友だけは、明らかに他の人と違う泣き方をしていた。それは輪の中に強制的に入れられたけれども、父を理解し得なかった私の目にはよく見えた。父の交友関係は広かったけれど、それは総てたった3人の延長にある物で、その事を感覚的に捉え対象者を特別扱いしていた父は凄いな、と思う。私とはたった20年の関係だったけど、一番短い母で35年、他は62年と45年、自分が大切だと思う人との関係を継続させた背景にはそういう父の3人への「特別扱い」があったのだと思う。
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