「 教室。 」/PULL.
忘れものを取りに教室に戻ると、
男がいた。
知らない男だ。
若い、
ひどく痩せた男。
クラスの誰かの彼氏だろうか?。
男はあたしに気が付くと、
声を掛けてきた。
「やあ、
きみここの学生?。」
「はっ…はい。」
「そうか、
そうなんだ。」
「はい。」
「もしかしたらこの春から?。」
「はい。」
「そしたら教授はあれ、
ガチョウ?。
まだ黒板の前で、
クワクワやってるの?。」
「はい。」
「きみさっきから、
はいしか言ってないね。」
「はい。」
「ほらまた。」
「はい。
…あっ!。
ごめんなさい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)