「 教室。 」/PULL.
 






忘れものを取りに教室に戻ると、
男がいた。
知らない男だ。
若い、
ひどく痩せた男。
クラスの誰かの彼氏だろうか?。
男はあたしに気が付くと、
声を掛けてきた。

「やあ、
 きみここの学生?。」
「はっ…はい。」
「そうか、
 そうなんだ。」
「はい。」
「もしかしたらこの春から?。」
「はい。」
「そしたら教授はあれ、
 ガチョウ?。
 まだ黒板の前で、
 クワクワやってるの?。」
「はい。」
「きみさっきから、
 はいしか言ってないね。」
「はい。」
「ほらまた。」
「はい。
 …あっ!。
 ごめんなさい
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