空を掘る/朝原 凪人
き出してきた
「どこへ行き着くんですか?」
「ん?」
「この空を掘り進めたその先に何がありますか?」
「わからん」
男はあっさりと言った
唖然とする私の顔を見て
頬を吊り上げると空を仰いだ
空は相変わらず青く晴れ渡っている
「解らんから掘ってるのさ。ただ一つ言えることは」
頤(おとがい)を上げたまま目線だけをこちらにくれた
「外。このビルに切り取られた歪な世界の外側。さ」
皇帝が勇者に伝来の剣を授けるように
男はシャベルを仰々しく差し出した
鳩は群れとなってビルで描かれた輪郭をなぞるように飛んでいる
「君は掘るのかい?」
私は
私はシャベルを恭しく受け取ると
男を真似るように空を掻いた
何の感触もなく宙を薙(な)いだだけだったが
私の頬には剥がれて破片となった世界が確かに降り注いだ
驚いて男を見ると彼はニヤリと笑って
背中からシャベルを引き抜いた
男が構え私もそれに倣う
私はシャベルを力一杯空に突き立てた
戻る 編 削 Point(5)