森番?透過する森のなかへ/前田ふむふむ
 
る。

・ ・・・・

動き出したバスは、豪雨で木が倒れて、
渋滞に巻き込まれたようだ。
世界の果てにある岸壁まで、灰色に染めるほど、
憎んだ、化粧をした断定を、
わたしは、透き間だらけの胸のなかにおいて、
突き刺さる、
鋭利な直線を引いていた。

探る手つきで、
痩せた少女に忘れかけた傘の所在をおしえてあげる。
造花でない笑顔。
気がつけば、わたしの暗室に閉じこめていた、
暖かい鼓動が、全身をめぐって、
両手には、もえあがる夏を握っていた。

いつものように、携帯電話をひらき、
見知らぬ友人を見つめる。
わずかに、流れるものがいて、
四角い光源を湿らせながら、
いくつかの文字列のあいだに、
抑えきれない号泣で固めた声をしまった。

天気予報をみる。
窓の外は、涙を窄めているようだが、
ながあめの始まりを告げている。
わたしは、明日から、
雨に煙る森に入らなければならない。





戻る   Point(38)