【小説】朝の食卓にて/なかがわひろか
た。
彼女が朝のデザートを何にするか決めた頃(それはいちご入りヨーグルトではなかった。彼女はそれほどいちごが好きではなかった)、僕は家を出る時間になったので、急いでコーヒーを飲み干すと、行ってくるよと彼女に声をかけ、彼女は玄関まで僕を見送ってくれた。
これもいつもの習慣だ。
僕はこうやって、また新しい人と、新たな習慣に身を置いている。
もうすぐ彼女の誕生日がやって来る。
お誕生日おめでとうと僕は言って、彼女はありがとうと言って、それから次の僕の誕生日まで連絡を取り合わない関係に戻る。
うん。
それも悪くない。
僕は、今頃彼女がいちご入りのヨーグルトを幸せそうに食べているところを想像しながら、満員電車に乗り込む。
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