source/水町綜助
 
そして滑った
 僕はずるりと傾いた ゆっくり ゆっくりと
 置きっぱなしのギネスのグラスに手が当たって
 グラスはほそい脚で三回ほどくるくる円を描いて踊ると
 そのまま優美に飛び降り自殺した

  ゆっくりおちて
   ゆっくりおちて

 そして光みたいな音を立てて粉々に割れて
 金色の液体をあたりに飛び散らせた
 床にぶちまけられたビールの匂いが立ち込めて
 その黄金の中で
 僕たちは黙り込んでしまった

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