少女の死刑/なかがわひろか
 
私を死刑にしてください
私を死刑にしてください

街行く人に向かって
私は大声で叫びます
みんなが私を振り向いて
みんなが黙って去っていきます

お嬢ちゃん
一人の紳士が声をかけます
そんなに死刑になりたいなら
誰かを殺したらいいんだよ

ねえおじさま
私は答えます
私にはそんな度胸などないのよ
だけど死刑になりたたいの

おじさんは困った顔をして
今から知り合いの裁判官とお話してみよう、と
私をその人の元へ連れて行ってくれました

裁判官のおじさまも
私を見て
どうして死刑になりたいのかね、と言いました

[次のページ]
戻る   Point(5)