いくつもの 路上/水町綜助
 
時中やぐらにすわって煙草を吸い吸い汗を拭き路上を眺めていた
しかし一週間もすると飽きてやぐらを降りてきた
何が見えたか聞くと
どこで行われていることも大して変わらなかった
とこたえた
そいつはたばこを一本吸うと広場に投げ捨てて
おちた火種の示した路を歩こうとしたがやめて
一本の路を選んで自分も歩き出した
西南西に伸びる道だった
ポケットに手を突っ込み
町外れまで
砂埃の上がる金色に焼ける道を歩いていった
そしてふいに路地に曲がって消えてしまった

夕刻近い昼下がり
道の上には人々の長くなった影がいくつも伸びていた


  *


雨が降りしきる道の上
いくつもの川が流れて
路上の皮膚を
そのおうとつを
顕かにして
なぞるように
流れて
あらわす
どこに流れていくかはどうでもいい
どこに吸い込まれていくか知らない
やがて海に帰るまで追わない

路上に水が留まることはない
ただそれだけのことだ



















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