夜の足音/はじめ
 
クな印象が僕を落ち着かせた
 竹とんぼを飛ばす子供を巨大な公園のベンチでぼんやりと眺めて
 ズボンのポケットに入っていた冷えた携帯を撫でて
 僕はゲーリーのアフリカ系アメリカ人街でホットドックを食べる想像をする
 僕は温くなったコーヒーを飲み干し パソコンから目を離す
 この暖かい暗闇がいい
 僕は部屋の隅のベッドに行き隅から部屋全体と窓の外を眺めている
 あぁ世界貿易センタービルにハイジャックされた飛行機が突入したんだったな と思う
 僕は狭い世界に住んでいるのかもしれない
 蝋燭を消して完全な暗闇が身を乗り出すと
 僕の心は暗闇と共鳴する しかし孤独である
 何処か遠くから木を伐採する違法業者のチェーンソーの音とトラックの音がする
 動物達はまだ生きられる場所があるから平気だと思いがちだが それは時間の問題だ
 暗闇と静寂に何を答えても何も帰ってこない
 ただその二つの薄い絹が重なるのが見えるだけだ
 僕は寝そべりながら唾を飲んだ
 今日も違法業者とエイリアンの浸食する足音が聞こえてくる
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