腥風/atsuchan69
 
( 錆びた鉄筋を剥き出しにした、
 崩れかけた支柱が夕映えの空へと伸びる )

すでに蝕まれたコンクリートの構造物に滲みる、声

 絶間ない、呪いにも似たその響き )))
 おそらく、何らかの意味を含むものの
 言葉というよりは悲鳴や唸り声にちかい、
 苦々しい独経のような多くの発声が
 垂直な空調ダクトを伝って洩れ聴こえている

蜂の巣を想わせる幾つもの部屋のうちのひとつ
たとえば此処で交尾をする、君と僕や また別の誰か
壁を舐めつづける女」や、人形とアソブ永遠の子供ら」
死を俟てども生延びる、杖をもつ弱者たちの呼吸
或いは複雑な記号と数式の階段を 昇り/降りする
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