夜は走る/夕凪ここあ
夜を走る
列車から覗く風景は
何もかも止まっているようで
少しばかり
眠ってしまっても
あしたには
間にあいそうだったから
夜を走る
光の羅列は
枕元を通り過ぎて
ずっと知らない街まで
細い道を辿って
それでも続いていく
夜更かしの少女を
とうに通り過ぎた頃
あ、
とぼんやり呟いて
ひとつ
消えた
夜を走る
風は遠くの海からの
澄ませば
かすかに潮っぽい
だけどそれをしないのは
海のない町だから
夜になると
居場所のない哀しみが
一人歩きしていく
地平も水平もない
路地裏に
夜を走る
蛍の点滅
綺麗すぎる場所では
生きれ
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