不思議の森の、叶えの樹/なかがわひろか
酒のつまみにしたそうだ
どこかのテレビ番組のインタビュアーが
老婆に森に入る者の基準を聞くために
老婆にインタビューを試みたが
目玉臭い老婆の唾を吐きつけられるだけで
何一つ得ることができなかった
かく言う私は
先刻老婆の許可を得て
森の中に足を踏み入れた
叶えの樹にはどうやって行けばいいかと聞くと
そのうち目の前に現れるよと言われた
森に入るための基準を
決して誰にも言わないようにと釘を刺されたが
一度森に足を踏み込んだやつで
二度と出てきたやつはいないんだよと
老婆はふふふと笑った
真っ暗な森の中
まだ叶えの樹は見つからない
私は一つの願いを胸に
森の中を歩いていく
(「不思議の森の、叶えの樹」)
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