小鳥と青年/はじめ
 
が無かった 俺はまだ寝ているのだと思い 起こしちゃえと思って ピーピー鳴いていると 突然彼の母親が部屋に入ってきて彼に近づいた すると母親は慌てた様子で片手に俺と同じ体の色の入った瓶を持って急いでお父さん!! と叫んで下に降りていった どうしたものかと彼の口元を見ると 黄色い錠剤が枕の下にばらまかれてあった 俺は愕然とした 彼は自殺をしてしまったのだ 手にはボロボロに擦り切れた聖書が握られており 賛美歌の最後のページを開いたまま死んでいたのだ 俺は声すら出なかった しばらくすると白いヘルメットを被った青年達が彼を担架に乗せて運んでいってしまった 数日後 この家で葬式があった 俺はただ下から聞こえてくる嘆き声を聞いているしかなかった 俺は悲しみに沈み 初めて目を潤ませた
 現在 俺は一階に降ろされて彼の写真の横で彼の両親に賛美歌を聴かせている
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