私料理/なかがわひろか
 


私は臭気の中を彷徨って
川に出ました
そしてお腹を空かせた魚たちが
一斉に私を食しました

私を食した魚たちは漁でつかまり
私は消化される前に
店前に並ぶことができました

育ち盛りの子どもたちや
お父さんの晩酌のつまみに
私は差し出されました
みんなおいしそうにパクパクと食べてくれました

たくさんの人のお腹の中で
私は今度は消化されまいと必死でした
そしてなんとか
彼らの体の一部になることができたのです

私は彼らと共に成長して
やがて彼らの体を支配するまでになりました

そして私はいてもたってもいられず
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