我が家のピエロ/加藤泰清
卓上でピエロがたたずんでいる。しばらくぼんやりとピエロを見つめていると、突然彼はこちらをむいた。どうやらぼくの呼吸の振動に酔ってしまったらしい。彼はそのことを簡潔に説明した。すみません、とぼくは右腕で彼の体を支えた。黄緑と橙を半分ずつに分けた色の鼻をつけたピエロなんてものはとてもでもないが珍しいらしく、だから私には卓上で棒立ちするぐらいの仕事しかない、いや仕事とも呼べないかもしれないね、月給もでないから私はこの仕事を好きでやるしかないのさ、とぼくに聞こえないような声で愚痴を吐いたけど、彼の口元はメイクの影響ではなく単純にとても大きなものなので、のどぼとけも正面から見てもとてもするどく尖っているのが
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