影の町で/なかがわひろか
 

生きるしかなかった

腐臭漂う犯罪者や病人たちが集うスラムで
僕はとある盲の男に出会った
彼は僕にご飯を食べさせてくれて
町の人から僕をかくまってくれた

ある日男は町の噂で
影殺しがこのスラムにいるということを聞いた
男はすぐに僕が犯人だと気づいた
男は僕に自首を促した

僕は突然彼がとても憎くなって
彼が寝ている隙に
彼の影をこっそり盗んだ

何日かして
男は町の人に捕まった
男の言い分は何も聞かれず
男は火あぶりにされた

僕は町の人たちに混じって
男が焼かれていくのを見ていた
男の影は何度か男の元へ駆け寄ろうとしたが
僕は男の影を鎖でつないでいたから
影は黙って見ているしかなかった

(「影の町で」)


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