【小説】彼女の「思想」とサンドウィッチ/なかがわひろか
 
切れ拝借しようと手を伸ばした。
 彼女の「思想」作りは突然中断される。
 結局パンというのがどんなものなのかさっぱり見当がつかなくなって、いい加減自分のやっていることに何の意味もないことに気づいた料理人のように突然その思考をやめる。
 彼女はサンドウィッチに手を伸ばしかけている僕の方を見て、不思議そうな顔をした。いや、なんでもないんだ。食べなよ。
 僕がそう言うと当たり前のように、彼女はオレンジジュースを一口とサンドウィッチを驚くような速さでほお張った。彼女の「思想」作りにはよっぽどの労力を費やしたようだ。
 すべてのサンドウィッチを平らげた後、もうないの?と彼女は言った。
 すぐに作るよ。僕はまたキッチンに立つ。確かまだ材料は残っていた気がする。
 僕がキッチンに立っている間に彼女はまた思考に入った。
 そんな風に時々こうやって思考する彼女を見ながら僕はサンドウィッチを作ったりしている。それが僕らの週末だ。

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