たまごを溶く/なまねこ
 

朝のつめたい白身は
表情にうすいまま
ステンレスのボウルを出して
たまごを割る
もちろん四つとも割る

弾性の黄身が四つ
明け方のボウルの中で
南国の海のかぶとがにみたいに並んでいる
キッチンの出窓から
とろりとあわい光が溶け出してくる
ボウルの中に
確かな黄身を感じる
朝は近い
もうすぐ
白身を切れば
もうすぐだ
黄身を溶いてしまえば

しずかな銀のフォークをボウルに差しいれると
出窓にもれる明け方の光から
ためらいのない
はじけるような朝がはじまる
戻る   Point(10)