近代詩再読 八木重吉/岡部淳太郎
 
覚であって素直に面白い。また、先ほど述べたように、八木重吉の詩のスタイルとして定着した短詩という形式が、こうしてひとつのテーマでいくつもの詩を書きつぐことによって、一種の連作または断章を重ねた長篇詩のように読めてしまうのは興味深い。

 八木重吉の詩について四苦八苦しながら何とかここまで語ってきたが、最初に述べた語りづらさというものはなおも残っている。私はこの詩人の特質である「変な感じ」の謎を完全に解明するまでには至らなかった。詩人の生と詩作を安易に結びつけたがるありがちな論調に疑念を持ちつつも、そうした論調の方に傾きかけてしまった。結果として確固とした答を提示できないまま終ってしまった形になるが、そのことはこの文章の大きな弱点であるのかもしれない。だが、今回改めて読み直してみて、詩と詩人の生、その関係性のあり方についていまさらながらに思いを深くしたのは確かである。




引用作品はすべて『八木重吉全詩集』(全2巻・ちくま文庫)から。




(二〇〇七年五月)
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