点火/水町綜助
 
方形に切り取った路地に出よう
そこを走ろう
にげつづけて
角を曲がり
朝日が昇りそうなら
丘に登り
夜が続くなら 駅前で
まるい噴水を覗き込む
泡立つ水面は何も映さず
だからこそわたしは
わたしと見詰め合っている
ましてや
肩越しに覗き込む
心配そうな顔など

わたしは
ほしを見ることが恐ろしく
やさしい言葉を
もちえない
口にする言葉は
すべて
ただ
生温かな吐息でしかない
熟柿の匂いのする
ためいきだ
ライターに点る
熱いしずくを
吹き消すだけの
ためいきだ
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