湖畔の洋館/はじめ
 
水面が静かに波立っていた 僕はその景色をじっくりと眺めながら湖畔の人工道をゆっくりと回って洋館に着いた 威圧的な雰囲気が漂う洋館は夜の空を背に聳え立っていた 僕は巨大な分厚い木の扉をノックした するとメイド服姿の君が扉を開けて出てきた 扉が閉まって僕と君は抱き締め合った それは短い時間であったが永遠と呼べるものであった やがて扉を開けてホテルのオーナーが出てきて 「熱くなるのもそこまでにしてくれないか。私の娘は君には渡さん。君みたいな風来坊な詩人に、安定した生活が築けるわけがないだろう? それとも君は世を取り戻して落ち着き、私の娘を幸せにしてくれるのかね?」
「詩人は止めません。しかし、各地を放浪するのは止めます。安定した生活は望めるかどうか分かりませんが、貴方の娘さんと共に、苦しい境遇を乗り越えて、幸せな家庭を築くつもりです。…どうかお父さん、娘さんを僕に下さい!!」
「…よかろう。そこまで覚悟を決めているとは知らなかった。娘を、大切にしてくれ。私の、誇りなんだ。頼むよ」
 僕は君と抱き合った そして僕達はこの洋館で働きながら幸せに暮らしている
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