明日の海/なかがわひろか
 
青い顔をした海が言いました
そんなに思いつめて
どうするんだい

あんたの顔色に比べりゃ
幾分かマシさ
私はそんな風に答えました

海の中に太陽がジュジュジュと沈んで
それはまるで唐揚げを揚げているようで
そんな海と太陽を見ているうちに
私はお腹が空いていることに気づきました

真っ青な顔色の海は
そんな私の心の内を明かすように
朱く染まりました
それは少し恥ずかしそうでした

お腹の虫がおさまり出した頃に
海は急に重く暗い顔になり
私を手招きしています

私はそれに吸い込まれるように
一歩一歩海と一つになり始めます
海の水が冷たいことも
海の暗い顔を見ていると納得がいくのです

顔色の悪い明日の海に
私は溶け込んでいくのでしょう
揚げあがった太陽は
きっとそのうち誰かが食べてくれるでしょうから

(「明日の海」)

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