螺旋階段はもう夏なのさ/虹村 凌
 
たら無いぜ

三階ですれ違った白長い影に
思わず振り向いて笑う
疲れちまったよ本当に
さっき落とした煙草が俺を追い抜いて
何処にも帰りたくないって呟いた
呟いてから秋の匂いに気づいた

あぁ
もうイカれちまったんだな
疲れたんじゃないんだ
笑っちまうぜ

白長い影は四階に付くと
鍵の音をジャラジャラさせてドアを開けて入っていった
音だけ聞こえて

壁によりかかる
風の強い日だったのか弱い日だったのか
もう何も覚えちゃいねぇ
もう何も覚えちゃいねぇ

二階
ドアの向こうは
どうなってるんだろう
外に出なきゃ
息が

まる


まぶしい
こんなにまぶしいのに
さむいんだ
疲れてんだな
きっと
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