夕暮れ町/ねなぎ
あの町の夕暮れにはカレーの匂いが良く似合う
大体
二日目
ジャガイモが煮崩れてるぐらいで丁度良い
あの夕暮れの町には
人は流れていなくても
夕凪にてろてろとした
柔らかさが流れていて欲しい
あの夕暮れの町では
今も何も変わらずに
チャボが蛇と争って
草笛が響いているのだろう
夕暮れの町ではいつも
焼けた臭いがして
硝子のブイが砂に埋もれて
転がっていた
夕暮れの町にはいつも
眠っているような木々が
散らかったままに
揺れていたと思う
夕暮れに町の
静かな夜が
押し寄せてきて
沈んでいる気がする
穏やかな時間は
緩やかな終りに訪れる
人気も無くなって
声も聞こえなくなった町では
野焼きの煙も
見えなくなっていた
僕が飛び出した夕暮れの町には
二度と戻れる事は無いだろう
あの町に流れていた匂いを思って
カレーを作っても
夕暮れはやって来なかった
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