死の時間/なかがわひろか
かめるようになった
何年かそんな生活が続いた後
私は病気になった
神経性のものらしいと医者は言った
心当たりはあるかと聞かれ
私は少し迷った後、首を振った
病気は日々悪くなっていった
毎日何かができなくなっていき
私は日に日に死に近づいていった
ある日
その日はやってきた
私は狂っていない時計を持ってきて欲しいと
最後の懇願をした
紳士が言ったその時間
私は時計を凝視した
その時間がやってきて
そしてその時間は淡々と過ぎて行った
私は笑った
それは最後の笑いになったが
私は笑った
紳士は時間を間違えた
紳士はただのペテン師だ
私はその数分後
息を引き取った
(「死の時間」)
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