死の時間/なかがわひろか
あなたの死ぬ時間をお教えしましょうか
隣のベンチに座った紳士が私にそう言った
面白そうですね
是非聞かせてください
紳士は答えた
それで
それは何年後の何日ですか
紳士はふふふと笑って
それは言えませんよ
私は時間をお教えするとしか言っていませんから
そんなことなら誰にだって言える
あんたはただのペテン師だ
まあいいじゃないですか
その答えはいつか分かる
そう言い残して紳士は去って行った
その日から私はその時間が来るたびに
時計を見るようになった
次の日も、
次の日も、
私は毎日毎日その時間を確かめ
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