魚の目/なかがわひろか
生まれたとき僕らは一人残らず
目玉の手術を受ける
僕らは始め誰も目を持っていない
昔の人にはあったんだ
だけどそれは真実を見出すことさえできなかったから
そのうち退化しちまった
だから僕らは大人たちの目を
自分たちに植え込まれる
大人たちは
子どもの頃に植えられた目を抜き取って
代わりに死んだ魚の目をくり貫いて
そこに埋める
僕たちの目は
はるか昔からの使い回しさ
大人がみんな同じ目をしているのは
それは仕方のないことなんだ
僕らはその使い古された目をつかって
これからいろんなものを見るだろう
だけど
段々それも古くなっているから
本当の
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