ビーンズボーンの詩/atsuchan69
 
 ありふれた【豆】。――心奪われて
一粒づつ、手の生えたやつを鋏で切り落とし、
妖しい黄緑の笑いに負けまいとする
僕は生体機械。幸せなど知らない

 そう。かなり前に飯炊きの胎から生まれて
ドグマを訓えこまれ、とても忠実に従っている
だけど時々 悪魔が耳もとでささやくんだ

 それはビーンズボーンの詩、
ろくでなしロボットの塵芥のことば――

  女は砂漠で息絶え、乾涸びて声となった
  声は天にのぼって雨を降らせる、
  そして雨は幾日もつづき 砂漠は湖になった
  湖に沈んだ哀しみの言葉が、もがくように泳ぐ
  やがて言葉たちは大小のサカナに姿を変え、
  果てしなく大地に背き、歩くことを止めた

 ビーンズボーンを、手足のまま食べて
妖しい黄緑の笑いに心砕かれ 泣き叫ぶとき
僕はもはや機械なんかじゃなく、歩くことなどしない
堂々と大地に背き、サカナになって湖を自在に泳ぐ。
だってあの声が、涙が、此処を住いとしたのだから

 ありふれた【今日】。――されど芽吹く、命たちよ








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