銀色のバケツ/黒い鴉
 
君が雪を見たいと言うから
バケツいっぱいに雪をつめて
溶けてしまう前に君の手の中へ
『冷たいね』って
それだけの感想
頑張ったかいがあったと
僕は感動

君は
もう来年の雪は見れないとか
冗談だろ?
全然笑えないのに
君は笑おうとするから
ならせめて
僕が笑わせてあげようと

君が花を見たそうにしてるから
バケツいっぱいに花をつめて
枯れてしまう前に君の手の中へ
『きれいだね』って
精一杯の感想
もう一度なんて
叶わない願望

人の存在を
雪とか花とかに例えるなよ
いつまでも君は君でいて
どうかどこにもいかないで

君がもうなにもいらなくても
あふれる程の愛を込めて
いなくなる前に君を腕の中へ
『ごめんね』ってこれは幻聴?
僕は熱くなるのに
冷めてく君の温度

今年はこの辺りにも雪が降って
二人一緒につくろうとしてた
雪だるまの頭の上
穴のあいたバケツを
かぶせてやった
穴があいても
つめるものは沢山あったのに
僕一人では
それ以上の意味はもうないよ
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