春眠/楢山孝介
いて
ショックのあまり僕は気を失った
気絶から目覚めるとまたさらに百年後の世界だった
人類は皆すっぱだかで外を歩いていた
どう見ても地球人に見えない連中もちらほらいた
エアカーはなかったが、人が空を飛べるようになっていた
幸いタイムマシンは実用化されていたので
身ぶり手ぶりで何とか頼み込んで乗せてもらった
ところがうっかり行先時間の設定を間違えてしまい
二十億年後の未来に着いてしまった
そこには宇宙人もあらゆる建造物も動植物も
さらには海までもが存在していなかった
もちろん人っ子一人いなかった
タイムマシンは僕を降ろすと勝手に帰ってしまったので
泣きたくなった、頭が痛くなった
そういえば風邪はまだ治っていないらしく
咳まで出てきた
咳をしても一人だった
剥き出しの太陽が僕を焦がし始めた
焼け焦げても一人だった
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