海眼/チグトセ
 
かじると塩味だった
あなたはビーチパラソルの陰にしゃがみこむと、背中を丸めて自分のバッグをあさりはじめた
僕は仕方なくもう一口かじった

何かが、無性に切なかった
何が切ないのだろう
こんなにも近くにいるあなたですら明確に見えないことだろうか
あなたがまぶしいその肌を隠そうとしないことが、悔しいからだろうか

丸まった背中に浮かぶ背骨
普段絶対に見る機会などない、背骨
ぼやけた視界に映り込んだ静止画の中で
その段段に均等に貼り付いた影は
溶けかけたチョコレートの鎖に見えた

思わず、触ろうとして伸ばしかけていた、指を
大慌てで引っ込めた
所在がないので急いで焼きトウモロコシの中に差し込んだ
皮をつまむと、力任せにはいだ


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