はる風/ポッケ
 

「休学することにしたんだって」


悩む顔も
丸めた体も
涙も

しらない

割れてるのでいいでしょ?てくれたお土産のかぼすゴーフレットしか
じゃまだといって押し退けた肉付きのいい背中しか
あっつい!ってだらだら流していた汗しか


「今治療しないと立つこともできなくなるかもしれないって」


あんたは付き合いたくない男だけど
いちごひとパック
食べる間じゅう
つぶつぶした歯応えのことばかり考えていた
いちごを突き刺して
赤く染まったつまようじ
のどから流れていく
赤い液体
そんなものばかりが額のあたりにはりついて
支えていられず
テーブルにおもいを預けた


「みんなには会わずに行きたいって」


はさまれたおもさに額を痛くしながら
おもいつくだけの
世界中で行なわれている終りをテーブルにのせると
よけいに
泣いた









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