巻貝の中に棲む女/猫のひたい撫でるたま子
 
るのか定かではない。

いつも忙しそうにしているが、その実、財布にはいつも小銭しか入っておらず、
仕方なくいつも「ご馳走さま」と誰かが言われて、ご飯を食べさせている。

僕もその一人で、網棚から荷物を下ろしてあげたことからすっかりとり憑かれてしまった。

細くか弱そうな体が、手首くらいの細さの足首で支えられている。髪は柔らかく、少し猫毛である。

いつもしている小さなピアスには金色の金具に紫色の巻き貝がぶら下がっており、これは最後の恋人にもらったのだと話していた。巻き貝の中にその恋人との思い出を音として詰めてあり、たまに外しては聴くのだ、とも。
僕の見立てで、彼女に似合うであろ
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