【短:小説】304丁目の黒川博士/なかがわひろか
三百四丁目の博士の家に行くまでに、僕は三十回くらいもう諦めようかと思ったけど、二百五十丁目の看板が見えたときには、なんとかもう少し頑張ってみようと思い直した。
博士の家に行くまでには、一丁目から三百四丁目までをひたすら歩かなければならない。もちろんタクシーを使ってもいいし、その間にいくつかの地下鉄も走っているわけだからそれに乗って行くことに関しても全く問題はない。だけど、乗り物を使って博士の家に行ったときは決まって博士の機嫌が悪いときている。それもたまたま乗ったタクシーの運転手が全く道を知らなくてタクシーの中で昼寝でもしようかと思っていたのに結局最後まで懇切丁寧に道を説明しながら目的地に辿り
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