現象でしかないひかり/水町綜助
が
カップを割って
口をあけたまま
叱られていた
もう何個めか
知れないのだと
白いきみは
窓からの強すぎる西日に
もう真っ黒にくりぬかれていて
頬の産毛だけが金色だった
うつろな目は鳶色で
やはり口はひらかれていた
それはついにとじられることがなかった
きみにはわかんないんだね
おれもわかんないよ
太陽にあきらかにされて
それでなにがみえる
みえたのは
不均等ないのちと
よるのくらさだ
かなしみもよくみえない
まだら色に曇ってる
ひと掬いして
飲んでも
治らない
熱がある
*
ひかりにひかれぼくは
なんとなく上に持ち上げられる
ほんとうに
なんとなくだ
それは
なにかをいいかけて
やめて
やっぱりいおうとして
やめる
それくらい
なんとなくだ
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