スピード/んなこたーない
仮死の昆虫
花の中で
海に向かって帽子を振る
素敵な日傘の設計図
女のように震えている
ミルク色のスピードである
額縁に嵌め込まれた
真夏のプロフィール
義手のシャベルで穴を掘る
大理石のテーブルで
食用薔薇にフォークを突き刺す
紳士の口から
狼の牙が覗いている
頬には一筋
逃亡者の淡い影がある
乳房の勾配
を滑る
少年もまたミルク色のスピードである
アルファベットの哄笑に
息を切らし走ってみても
太陽はその位置を変えない
都市生活者の重たい頭痛
事件のない日曜日
緑色の苦い粘液
石膏と素肌が交わる淫らな夢
戻る 編 削 Point(3)