詩集・人生の最中に/生田 稔
 
遊ぶ童が尋ぬ
 姉さん 姉さん
どうしてそんな悲しい歌を

よくぞ問うてくれたのね
わたし今年の十九の春に
他国へ売られてゆくのです
紅いリンゴの頬の色さえ
もう色あせて老婆になって
その運命こうして笛を吹くのです

姉さんよ、おいらもいつか
大人になれば
姉さんの吹くその音色
響く心に思い出し
涙を流してやりますぞ

ああ、もう日は沈み
灯点しごろ
笛を吹くのはもうやめて
向こうの山に帰ります
坊やもいえに帰りやんせ 帰りやんせ

遠くかすんできえてゆく
後姿ももの悲し
世にありふれて伝えらる
今夜は曇り 蒸し暑く
昔話もおおかりけれ・・・・
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