腐った蜜柑の周囲の蚊の飛翔によって悪夢から目覚めた3秒後のうた/虹村 凌
 
夕日を見ていない

あのラヂオ番組まであと二分
汗を流そうとシャワーを浴びてたら
排水口と目が合って離れない
全てを飲み込む深い穴は
スプリングの壊れたベッドで寝た
何時かの誰かの目とよく似ていた
赤 白 黄色を飲み込む暗い穴は
開ききった瞳孔によく似ていた

気付けば夜明けまであと二分
珈琲とミルク混ぜながら導火線に火をつける
長い事 沢山の朝焼けを見てきたけれど
こんなに焦げて苦い朝焼けは初めてだった

道行く人の数にあわせて
もう一度コンプレックスの数を数える

阿呆くさい
ベッドに戻って抱いて眠ろう

馬鹿な…こんな死に方が…
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