老画家/楢山孝介
 

爽やかに吹く風
そよそよと吹く風
または暴風
果ては台風までを手づかみでちぎりとり
乱暴に白いキャンバスに貼り付けて
「これがほんとの風景画」
などとのたまうじいさんがいる

同じようにふざけた調子で
そこらを歩いていた小さな象を
捕まえて貼り付けて「小象画」
喉の奥から
自我を引っ張り出して貼り付けて「自我像」
などなど

じいさんの駄洒落に付き合うのは疲れる
時折その強引なやり方に腹が立つこともある

だけど悔しいことに
傑作ばかりを描きやがる
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