イーサー/イーサー/石田 圭太
 

何も聞こえなかった
何もかも届かなかった
例えば例えようのない不安を
例えようのない今を
例えば少しでも
ほんの少しでも美しくしようと試みて
羊を数えてそれが夜でも
君も夜だし
まだ底の底で夜明けを待っているのなら
来たって
君には関係がない
それは寡黙な唄だ
俺には関係がない
俺はもうとうの昔に上がってるし
空まで昇ってるし
始めから
煙突から
煙突の先から
誰かの煙草から
どこかの煙草から
立ち昇る
飛散する
やり過ごしてしまう
煙だし
俺は
君の肺を汚くしてあげる
汚くしてあげられる
やがて君は調べ上げられる
調べ上げられる命と
調べ上げられる肺と、水と、煙と、
調べ上げられる狭間で
肺に調べ上げられる
鼓動/86.400回に還って
鉄の匂いがして、命の音が聴こえて
それでふたつ
一日が終わってしまうから

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