灰色レンズアイの男/カンチェルスキス
 

 おれたちは一生そこにいるだけで
 そこにいることに対し満足しなきゃならないって
 思い込まされ本人も納得顔で
 死ぬまで延々と陳腐な会話を続けて
 惨めったらしいのは
 本人たちじゃない
 横で会話を聞かされてるやつだった。
 誰もしゃべらなくなったら
 世界が見違えるように素晴らしく思えるやつだって
 いることを
 誰も知らないという話は
 おれはまだ聞いてない。
 何のことはない話は突然変わるけれど
 灰色レンズアイの男は
 まだおれの左斜め向かいに座ってて
 体を前に傾けると
 開きっぱなしのレンズのまま
 ××××駅って停まりますか?と訊いてきたので
 停まりますよとおれは答えた。

 







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