風、風/なかがわひろか
飛ばして
そしたらなんにもなくなって
なんだかそれはとっても面白くて
私はまた走って
あなたも随分走って
疲れて
また走って
時々歩いて
キリがないから
もう片方のあなたの頬を突付いて
今度はもっと大きな台風を起こして
それに乗って世界を飛び回ろうと思ったら
もう空気は残っていなくて
ただ痛がるあなたと
私は二人で
だだっ広い世界に
取り残されて
取り残されて
結局世界はこんなものかと
あなたが言うので
そんなものよと
私は言ったのです
(「風、風」)
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