エビフライのタブー/ブルース瀬戸内
愛嬌です。
私はタルタルソースに旨味を引き出されるために
生まれたわけではありません。
連綿と続くエビの歴史、いわゆるエビ史を支えるための
生物的本能に駆られて生きているのです。
私の主戦場は皿ではなく海です。
カラッと揚がってごきげんの
エビフライにも意地があります。
エビフライ最大のタブーではありますが
エビはカラッと揚がった後も
一度だけ背骨をピンと反らして
大きく跳ねることができます。
いつも、そのタブーを見せつけようと
渾身のバネ使いを見せると
私はとっくに口の中に入れられて
「お、生きてるかようにプリプリじゃないか」
という言葉で
バネの凄味はかき消されます。
そんな時、
タルタルソースは私を見て必ずニヤリと笑って
笑った理由を説明しようとしながら、
あなたの食道へ消えていきます。
戻る 編 削 Point(1)