『レクイエム・レモン/ひかり』/川村 透
 
と、確かに聞こえたんだ

マリー、マリー、マリー、許し給え、聞こえる、波の音じゃないあれは
君の首飾り、黒いレモンを輪切りにしてギロチンが
重い鈴のようにおごそかに落ちて来る!
柑橘系の果汁が膿のようにでろりと溢れ首のない君は誇り高く拍手と罵声を浴びる
海鳴りのようにひとびとは足踏み鳴らす騒々しい船幽霊たちよ
兄は君の手をしっかりと握り締めている水死体のように蒼くろうたけて刃の首飾り
黒いレモンを半分ずつスクウィーズする兄、妹、の
足元で
死はぴちゃぴちゃと波に姿を変えて爪先よりももっと下から舌なめずりをしている
太陽の蒼い炎だ


----君は喪服でフランス人形みたい
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