連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
休息所を求めた
周囲の原色の風景に比べれば
そこはまだしも暗黒に近い
ところが橋の下には先客がいて
彼を待っていた
それは祈る人以上に薄汚れた風体の
男だった
中年なのか 老年なのか
齢の定かではない男の
瞳を覗きこむと
二千光年の彼方へと
弾き飛ばされたような心地がした
男は
紀元前と紀元後の境目から
やってきたのかも
しれなかった
祈る人は
男とともに橋の下に坐り
借り物の暗黒に安らいだ
やがてふたりは
どちらからともなく口を開いた
男は祈る人に
自らの秘密を語った
――俺には見える。こうして橋の真下に坐ってい
ても、橋の上を通る人々
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